たった3人の新設部署が仕掛けた大企業の協創文化浸透ー延べ522名が参加した新規事業創造イベント
三菱地所株式会社 営業企画部 協創マーケティング室 沖野周一様
- 実施内容
- 全社員を対象に「エンターテイメント」、「アート」、「SDGs」をテーマに据え、「ideagram」を利用したオンライン新規事業アイデア創出イベントを4ヶ月で3回実施。
- 実施期間
- 2019年12月〜2020年3月
- 課題・背景
- グループ内外に点在する新規ビジネス関連ナレッジを体系的に集約した「協創データベース」の全社的な認知度向上・活用促進を目途に、オンライン上で効率的に行える全社横断的なイベントを企画。
- 実施結果
- 合計3回のイベントで延べ522人がイベントに参加。約1,500個のアイデアの種が誕生。
- 創造されたアイデアの実現に向けた取組が始動。
- 協創データベース及び協創マーケティング室の全社的認知度が向上。
2019年4月、組織の垣根を越えたグループ内外の協創活動により、新たなサービスを生み出すことをミッションに立ち上がった協創マーケティング室。1,000人規模の企業で、たった3人で協創活動を加速させるため、イノベーション創発ツール「ideagram」を導入。全社的な新規事業アイデア創出イベントを定期的に実施し、それまで各部署毎に留まっていたアイデアの横断的共有とそれらを活用したアイデア創出を図った。4ヶ月で延べ522名が参加したというこのプロジェクトをリードした沖野様にお話を伺いました。
全社員が参加できる自社独自の新規事業創造イベントを企画・実施し、新たな文化を醸成
今回、この取組の実施背景を教えて下さい。
2019年4月、三菱地所において「新たなサービス・コンテンツの発掘」、「新たなターゲットの発掘」ものを創造することをミッションに「協創マーケティング室」が新設されました。4人の部署としてスタートし、これまで、社内の部門ごとに点在し共有されていなかった新規事業となり得る情報の一元化・共有を目途に「協創データベース」作りに着手しました。本データベースにカテゴライズされているテーマを取り上げ、自社グループの事業領域と掛け合わせて新規サービスを考えることを通じて、この協創データベースの認知度を高めるため、「ideagram」を導入することを決定いたしました。
実施プロセスを教えてください。
イベントの概要が固まった後は、社内の参加者を募るべく各部の部会で説明、社内のインフルエンサーへの展開等広報活動に力を入れました。加えて、会社で実施している「10%ルール(※)」の対象となるよう人事部に掛け合い、本イベントへの参加が人事評価に反映されるよう工夫しました。昨年は4ヶ月間で3回、「エンタメ」、「アート」、「SDGs」というテーマでイベントを実施し、述べ522名が参加しました。本来の目的はイベントを通じた協創データベースの認知度向上ではありましたが、エンタメ:675個、アート:500個、SDGs:284個と、想像以上のアイデアの種が創出されました。各テーマを通じて出てきたアイデアの中には実現可能性の高いものもあり、実際、アートのテーマで出てきたアイデアをベースに検討中の案件があります。
※業務時間の10%を、ビジネスモデル革新(既存事業の進化、新規成長領域への進出)」に繋がる取組に使う社内ルール。
ideagramの導入によって、社内の意識や文化に変化はありましたか?
「何か面白そうなことをやっているな」と徐々に社員の中で認知され始め、全く面識のない社員から、前向きな感想や激励のコメントをメールでもらうことが何度もありました。イベントに参加する過程で新規事業創造に対して理解が深まり、ユーザー視点で考える文化も広がったと思います。その結果、当初の目的である部署及び協創データベースの認知度も高まり新サービスや市場・技術トレンドに関する相談がよく協創マーケティング室に寄せられるようにもなりました。
一連のプロセスをオンライン完結で実施出来、時間・場所の成約が無いことも参加促進材料となった
業務効率の観点ではいかがでしたか?
今回、全てオンラインセッションだったため、時間と場所の制約も無く、業務外で実施するイベントとして参加者も事務局も大きな工数を割くことなく実施ができ、出社制限の際にも障害なく実施できたので良かったです。また、今後は、既に当社で行っている「アイデア公募制度」の一次ステップとしての活用が実現すると、候補者からのアイデア公募・アイデアの評価・フィードバックなどのプロセスが大幅に短縮出来ることになると思います。
今後の展開について教えてください。
今後は社内インフラとして定着させ、実現可能性の高いアイデアを提案者と一緒にブラッシュアップし、事業化に繋げていきたいと思います。また、ideagramの相互評価の技術は、通常の新規事業コンテスト等とは違い、匿名によるものであり、公平性が担保されていることから、様々な部門での利活用を望む声も届いています。自社における協創文化の浸透、個々の社員の意識改革を通じて、部門の枠を超え三菱地所としてのイノベーションを活発にしていきたいと思います。